女のまたに力と書いて努、力。

昨日一緒に仕事したTさんは美人似顔絵師。先に肩書きが付くとちょっと綺麗なだけで「美人ナントカ」になるもんだけど(美人医師とか美人将棋士とか?)彼女は同世代の私から見ても絶対三十代そこそこに見える。聞いたら私より一つ年上だった。ありえん!スリムな身体に肌がぬめるように白く、豊かなロングヘアがツヤツヤしててさりげなく内巻き、目がぱっちりしてて睫毛も長く、伏し目がちながら歯並びの良い微笑みが感じよく。人のこと、絶対悪く言わない。会話する時は常に「そうですよね…」「そうなんですか…」と常に「…」で終わる。決して人を否定しない。加湿器みたいだ…よくわからんが彼女の存在だけで結露になるくらいの凄艶さ…。「押せばじゅっと出ますよね…。」「え…」「色気…。」「そんな…(微笑。絶対はっはっh!なんて大声で笑わない。ほほほ…とか、うふふ…)」と思わず本人を前に直接言ってしまった不躾な私。「あぼかどさん…年を重ねても女で居続けるというのは、ときにつらいときもあります…」と答える彼女…。

隣同士で営業したけど、お客さんが途切れると彼女の周りには男性営業さんたちが花に群がる蜜蜂のようにヘラヘラしながらお愛想を言ってるんだ…私の周りには鼻息の荒い子供や呼吸している餅(※)のような赤子、期待に目を輝かせている若いお母さんとかしか来ないのにぃ

伝説の人物で言えば、八百比丘尼…。虫で言えば、女郎蜘蛛…。乱歩で言えば、黒蜥蜴…。美保子で言えば、Gメン77の藤田三保子…(決して山田美保子ではない)お盆に田舎に遊びにいったときに隣のお姉さんが嫁に行くと聞くような儚さ…縁側に挨拶に来たお姉さんの、コットンドレスの裾から覗く白い肌とうす青い血管…つばの広い帽子の下の美しい顔には濃い陰がかかって、思い出すと霞のような…絡めとられて出られない、甘美な牢獄か、はたまた少年の甘酸っぱい想い出か。メーテル…私には鉄郎は理解出来るけど、メーテルは出来ないな…永遠に…永遠の憧れ…

※…餅、と割り切って描いた方が喜ばれる。おでんくんと同じく口には出さないけど。