幸せな子

「幸せな子ーアウシュビッツを一人で生き抜いた少年ー」トーマス・バーゲンセール、訳:池田礼子/渋谷節子、を一気に読了。驚異的なバイタリティの手記。父は亡くしたけど母とは別々に生き延びて再会し、アメリカに渡り国際人権法の権威になった。

この少年、主に天才的に機転の利いた母親の血(「ライフ・イズ・ビューティフル」の主人公のような)に依るものだろうが、幾度となくあった死の危機を、結果から言うと見事にすり抜けて生きた。わずか十歳の一人きりの危険な旅。飢えて凍えて足の指を無くしても精一杯伸ばした手を、掴んでくれた…それを神だとは彼は書いていない。幸運だったと、「幸せな子」だと自らを呼ぶ。人権について深く学び、助け、教え、その幸せを他者に分け与えている、今も…。

私が胸を打たれたのは、一部凍傷で入院していて信頼していた医者たちに置いていかれたときのくだりである。置いていかれる=死であった。歩けずベッドに横たわった仲間に「僕は君と一緒に死にたくないよ!僕は死にたくない!」と叫ぶ。なんという生命力かと…断っておくけど、少年トミーは勇敢で公平で、人に、弱いものに優しいのは今までの描写でよくわかっていた。この場面、よく書いたな、と。実にヒトラー自殺の直後の事であった。というわけで、その場に居た全員は生き延びる事が出来たのでした。

余談だけど、訳は雅子様の妹御のお二人である。

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メモ:承認欲求