私の頭の中の消しゴム

得意だったのは現国と世界史。数学と物理は赤点で…という高校生でしたが、現国は当時なぜか五択の正解が視え、世界史は年取った先生が教科書をコピーしてから年号や出来事のところを白抜きして出題、こちらもテスト前十分の休み時間でページごと教科書を写真込みで記憶して残像を追うように書き写していた。それはだから、暗記パン形式、勉強としては全く間違っていた…。まあでも、体調が良ければいつも満点に近かった。

三年生、ピリピリする年頃ですよ。噂は聞こえていた。テープに年号と出来事を録音して聴きながら回答するヤツがいると。一緒のクラスになってたと知ったのは期末テスト。聞こえるのです、それは読経のような。年号を読み上げる微かながら確かな声。ああ、私のプレシャス残像が遥か遠くに消えていく…!

おわかりのように、私がヤツに消しゴムを投げつけたのは決して正義感ではなく、「お前はゴッドタンの”気をそらせ隊”か!」というごく私的な怒りからでした。そしてノーコンだったのでヤツの後ろの席の不良グループと目されていた男子に当たったのでした。「誰だ!(怒)」と大声を上げて振り返る彼。監督の先生は騒ぎに気づきましたが試験が終わるまで黙っていました。

テストはなんとか提出しましたが、もちろん、壊滅的な出来でした。私は終わった後黙って帰るほどの度胸は無く「わたしがやりました…」と名乗りを上げ、もちろんどうしてかと問われ、テープが聞こえてきたと話し、しかし、誰がとは言えませんでした。

告発する側にはなりたくなかった。死刑執行のボタンを押したくなかった、なんで私が押さなきゃいけない?その後学年主任に呼び出され、執拗に問いつめられ、ついに白状しましたが、負けた気がした。なんでだろう、誰に負けたんだろう。そして謹慎処分になったと聞いてものすごくイヤな気持ちになったけど、なんでだろう?なんでだと思います?