カネとゲージツのあいだ

先輩が言ってたんだけど…駆け出しの似顔絵作家が支払済のお客さんを目の前に作品を描きながら謙遜する。「ボクなんかまだまだ修行中で…こんなのラクガキで…」卑下でもいいや。それは個人の勝手だけど。

その今目の前で制作しているものはお前のゲージツなのか商品なのか?とりあえずお客さんは違和感満載だろうな…ラクガキならタダであげたらいい。ラクガキでいいか、と客に聞くのは傲慢だし、この際は事後承諾を迫ってるわけだ。

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こんにちは。一雨来て涼しいですね、少し。

ちょっと真面目な話です…こないだお会いしたときに先輩がお話しされた話のことです。似顔絵作家の若い男の子がお客様の前で、「ボクなんかまだ修行中で、こんなのラクガキで…」とすごく謙遜してたのを見て先輩が「自分の絵なのか、お客さんの絵なのか」と思われた、と、この話がなぜかいつまでも心に残っております。

私もまだ修行中ですし、お客様に「まだ…三年ぐらいです…まだまだ修行中です」と言ったりもします。実際キャリアは浅いしまだまだヘタクソです。でもやっぱり、こんなのラクガキで、とは一番の禁句だと思いました。何故ならお客様とは契約終了済みで、真っ白な色紙の時点でもう商品であり、作画中もお客様の買った品物として作品に客観的に敬意を払わないといけないと思うのです。「ラクガキだったらタダでくれ」ということになります。信じてお金を払ってくれたお客様をもバカにしたことになるんじゃないでしょうか。だからラクガキと言ってその価値を貶めてはいけないんです。

だから、ときにはハッタリも必要な責任の取り方だと思います。思い上がれというのではなく、主観的にならざるを得ない自己へのアーティストとしての評価と客観的になるべき商品への評価はビジネスにする以上きちんとラインを引かねばならないと思います。

私にそんなこと言われなくても十分にお分かりだと思いますが、私がふとした瞬間にこのことを考えてしまい、その理由と考えを整理するのに先輩に宛てる書簡の形にさせて頂きました。読んで下さって有難うございました。