視点

また大江健三郎の余韻だけど、「在」って言葉がそこかしこに出て来る。

私は青森の片田舎出身だけど、祖母がよく「在の人」「在郷」といっていた。それは私たちの住んでいたところより更に奥まった部落(ここでは集落の意)を指していた。辞書にもそうある。

しかし、「M/T」の中ではその意味は違っていた、むしろ町の人、都会の人、自分たちとは違う人種、と、逆差別のような色合いを含んでいたと感じた。自分たち村(地理的には所謂更に奥まった地域であるのに)の人を特別に選ばれた人たちのように…選民意識という言葉もイメージしたほどに、孤高。この作品において語の意味は反転していると言っても良いと思う。

我が敬愛すべき従姉妹殿にこの話をしたら、大江健三郎は部落問題に関心のある人だから…と華麗なる示唆をくれた。私はそれで腑に落ちたように思ったのだった。もうひとつのキーワードは地図だ。本の中にも「五十万分の一地図戦争」てあったし、序章から地図の話だった。起点を、或いは基点をどこに置くかという話である。そもそも論として地図ってヤツも最初は基点に棒を刺して、そこから紐をつけた矢を飛ばして、それでぐるりを囲んだのだ。

基点をどこに置くか、か…。その昔、エジプト系アメリカ人の女の子にエキゾチックだねと邪気無く言ったら、アジア人に言われるとわ、なんて鋭く返された事を思い出した。この中華思想的な考え方が田舎者なんでしょ。

本の中を旅する、面白い。まだまだナゾはいっぱいある。読書会でも、わからないことはわからないままに置いておきましょう、という結論になったから、これでいい。