ホログラム

先に祖父のことを「生きたいように生きた」と書いたけど、そうでもなかったんだなーと、実家の母との会話で思った。彼が六十を超えてからの事しか知らないが、いつも気分で怒り、恥ずかしくて人前に出せないといって小学生の私の絵を水で消し、自分で描き足して学校に提出を命じるような精神的にいつまでも幼い人だった。

母が、「以前ほど恨みを吐かなくなったね」と言った。最近聞いた話だが、自分の父の介護に来た女性と駆け落ちし、祖母に見つかって連れ戻されるまで潜伏先でカフェを経営?するような人でもあった。そして恐らく罰として…生涯小遣いを持たせてもらえなくなった。いつも飼い犬と一緒に窓の側に立って買い物三昧の祖母を待っていた様子も、実はよく覚えていたんだなぁ。大人になったんでも赦したんでもなくて、ただ、出来うる限りあちこちから照らさなければ、正確な像を結ばない、ということに気づいたんですな。いや正確なんてあり得ないのだ、ただなるべく公正であるように…とか、思ったりして。

祖父も絵が好きで自負があった。今なら、ひとを描いて喜ばれることがあるんだよと教えてあげられるのに。小遣いも出来たかもよ?

<追記>要は「小遣いが無いと人は鬱屈する」って話ですよ。あと、孫としてはもし祖父が自分の出奔を後悔して「俺は生涯小遣いは持たぬよ」と自発的に言ったのならカッコよかったのにと思う。でも彼は私に似て本当にヘタレだから。