夫がイカになった話(語り:市原悦子ふう)

こないだダマーのところの卒業式があった。夕食は要らないというので私も遅くなったが、先に帰宅していたようだった。ソファの上に、両足をくの字に折り曲げてだらりと平たくつぶれていた。「イカのようでしょ♪」と自分で言う。ああ、アルコール漬けのノシイカのようだな。「君にもロールケーキのようなものを買って来てあげた♪」というので丸テーブルの上を見たら、コンビニスイーツが二切れ残っていた。元は六切れあったらしかった。「学生に頼まれていた似顔絵渡してこなかったね?!」と逆切れ気味に聞いてみたら、「渡したよう〜喜んでいたよう〜♪」と言うが、なんだか信用出来ないので、そのときの様子を事細かに再現してみよと命じた。「そりゃあもう〜♪しゅごいね〜しゅごいね〜♪って♪」とへべれけになりながら、へべれけだからこそ映えるややフラダンス調(というとフラダンスに失礼だけど)で身振り手振りで演じてみせていた。その後またイカに戻ったので、寝室に誘導するのが大変だった。翌朝寝室は物凄くアルコール臭く、イカはやや緑色がかっていた。